限りなく透明に近いブルー

著者:村上龍
発行者:野間佐和子
発行所:株式会社 講談社
1978年12月15日第一刷発行

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 あの時はさ、からだの中にいっぱい重油が入ってしまったけど、あの時も恐かったけど今は違うんだ、からっぽなんだよ、何もない。頭は熱くてたまんないし、寒気がするんだ、どうやっても寒気が引かないんだよ。うまく思うように動けないんだ、こうやってしゃべってても変なんだ、まるで夢の中ではなしてるみたいさ。

 手のつけられない恐い夢の中で話してるみたいなんだ、恐いよ。こうやって今しゃべってても頭の中では全く別のこと考えてるんだ、頭の足りない日本人の女と、リリーじゃないよ他の女だよ。その女とアメリカ人の軍医のことをずっと考えてるんだ。でもこれが夢じゃないってことはよくわかってるんだ。目を覚ましてて、ここにいるってことは知ってるんだ、だから恐いんだよ。死ぬ程恐いんだ、リリーに殺して欲しいくらいだよ。本当に殺して欲しいよ、ここに立っているだけで恐いんだ。

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 村上龍の作品は2度挫折してる。
 一度目は「コインロッカーベイビーズ」 二度目は「半島を出よ」
 そして、タイトルからずっと気になっていた「限りなく透明に近いブルー」を読書欲だけで乗り切った感じが凄い。

 村上龍の作品はとにかく難解だと思う。そしてコレを24歳で書いたという事が更に驚きである。

 本作のテーマは「麻薬」と「セックス」
 忙しない程の麻薬の乱用と、繰り返されるセックス。若者たちが狂いに狂う作品だと思う。

 読んでる最中は物語が掴めなかった。ただ、本当に麻薬とセックスに溺れる不可解な日常を繰り返す彼等。

 だけど、後半からはずっと虚無感しかなくて、寂しさが襲ってくる。慌ただしいのに、薬が無いと泣き叫ぶのに、とても静寂で声しか聞こえない。まるで美術館の中でただ一人この劇を見続けているかのようだった。

 本当に感想を述べるのが下手だなぁと思うのは、伝えるのが本当に難しくて、まるでずっと絵を読んでいるような感覚だったからだ。

 言葉の音、感覚、其れに流されながら私も村上龍という麻薬の中に埋められていたのかもしれない。


 とにかくもう少し読書スキルが上がってから挫折した作品を読んでみたいものである。


限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)

限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)