老いのたわごと

著者:岡村さく
発行者:古川久
発行所:株式会社佛乃世界社
1973年6月13日第一刷発行

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 「凡智でいいんだよ、岡村さん。人間みんな凡智なんだからそれでいいんだよ。あんたんとこはタスキを染めてればいいんだから」

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 随分と古い本を読んだ気がします。私は産まれて居ないし、著者の岡村さんもコレを書かれた時は71歳というお歳だったそうで、掠りもしない人生の中で、こうやって巡り合えるのですから本は凄いな、と再確認もしました。

 さて、何故読んだかと言うと”母に薦められたから”という理由。じゃないと、古い本はきっと読まないし、昔の人の考えよりも新しい本(最近SFが楽しくなってきた頃だしそっちを読めば楽しいしなーという考えもありけり)を読んだ方が面白いんじゃないの!という考えを持っているので手に取る事もしなかったでしょう。母は読書家です。青春時代は本を恋人にする程、本と戯れ、本と暮らしてきました。なので、私の家には本が吃驚する程あります。(父も読書家だったので。)そんな母が薦める本なのだから一度は読んでみないと…という柔らかい考えはきっと、「桜庭一樹の読書日記」を読んだからじゃないのだろうかと思います。

 本書は71歳のお婆さんの独り言のような書き方が延々と記されています。著者の半生を綴ってあるのですが、殆どが「仏教はいいぞ」というものです。先に言い訳をさせてもらうと、私は無宗教だし、だからといってどの宗教も否定する訳でもありません。信者さんを5万人も抱えた、今でいうカリスマ性がある方なのだろうと読んでいて思いました。きっと大半の人は途中で「何だよ、自分の宗教のいい事ばっか言ってこの宗教を布教させるつもりだろう」と、思うかもしれません。私も正直思いました。けれど、読んでいくと失敗も沢山あり、当たり前の事も沢山ある。抜粋させてもらった言葉の当たり前さにひどく納得させられました。後は「恩は着るものであって、着せるもんじゃない」という言葉や、他様々な事柄。「お経を詠んで考えた」等という言葉を省くと、宗教っぽさは消えるんじゃないだろうかと思います。

 いい話でした。とても。だからといって私が「そうだ、仏教徒になろう」という考えを持つかと言うとそうではありません。ただ、当たり前の事をゆっくりゆっくり教えてもらった感じはします。

 いつまでも、どんな大勢の人間の上に立っても、自分をどこまでも謙虚に持つ著者の心は素晴らしいなという感想。こういうお年寄りになるといいんじゃないかな。少し押し付けがましい所もありましたが、其れは性格と、言う事で。


(随分と古い本なのでamazonの広告が貼れません。感想を述べたのにも関わらず手に入らない本でなんともはや…という気持ちです。スミマセン…。)