どうかと思うが、面白い

 著者:平山夢明
 絵:清野とおる
 発行者:久保田榮一
 発行所:株式会社 扶桑社
 2011年6月11日 第一刷発行

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 小学校の頃、アオベンというのがおりまして、彼が「ヒラヤマ君。僕、実は金星人なんだよ」などと九九の時間に突然、耳打ちしてきたのです。「絶対に秘密だから誰にもいってはいけない」と釘を刺されたわたしはこの地球外生命体との接触に鼻血が出るほど興奮し、彼に金星人のメンコのやり方や金星ラーメンの食べ方などを教えて貰い感動していました。特に「僕が金星に帰る時には川崎球場を風呂敷に包んであげる」という大胆なプレゼント宣言にはド肝を抜かれていました。もうそれをきいてからは一刻も早く金星に帰って貰いたくて、彼の筆箱を隠したり、ランドセルに水槽の蛙を入れたりしたものです。しかも、彼にはとっておきの<金星人>証明法があったのです。彼の告白を初めて聞いたわたしが嘘だろうというような顔をしていると彼は「ついてきて!」と、バス通りにわたしを誘い、横断歩道のある交差点に立ちますと、おもむろに左折してくるバスにズックの爪先を踏ませて平然としているのは金星人以外にはありえません。唖然としているわたしにアオベンは「金星人の躰は金でできているから硬いんだよ」と誇らしげにいいました。で、その年の暮れ、アオベンが女心をコントロールすることによって恋人化させた女の子というのが現れたのです。その子は別のクラスであり、しかもわたしには、アオベンのことを嫌っているように見えるのですが、アオベンによると実はかなり精神的な<犯し>が入っていて、必死に無駄な抵抗を試みているだけなのだというのです。

 第10話
 <金星からやってきたクラスメイト>との思い出
 より抜粋

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 どうかと思うが、面白いです。いや、本当に。よくここまでエピソードがわんさか出てくるなというぐらいに。もしこれが大半作り話だったとしても、こんなに面白おかしく人を引き寄せて作品を産み出せる平山夢明はまさに天才。しかも、私の大好きな清野とおるさんが挿絵を描いてるというではないですか。
 清野とおるさんは漫画家で、最近有名な本は「東京都北区赤羽」ですかね。オールカラーで事実しか描いていない漫画。ですが、とにかく面白い。変な人に会う。よくそんなに変な人に会うなぁと感心する位会うのです。そしてそれは平山さんも同じ事。きっと変な人を惹きつけるオーラが二人にはあるのでしょう。(作中でも書いてありましたけれどね)

 小出しのエッセイ集という感じでタイトルが全てについているのですが、全73話なので書くと縦長になってしまうのでご了承下さい。1話3頁ほどの短い文章。其の中には至る所に笑いが組み込まれています。そして、其れをコントロールする平山先生の言葉選び。…まさに最高というのはこの事かもしれません。

 注意する点とすれば、移動中の電車、バス、学校、職場などには持ち込まないという事ですかね。とにかく家でリラックスして読んでいただきたい。とにかく声出して笑える体制を作っていただきたい。それがこの本を読む時のスタイルかもしれませんね。

 買って損無し!寧ろこういう連載をしてくれていたSPA!に感謝しまくりですね。平山先生の真面目な文章も凄く好きですが、こういう下らない本も面白くてこの人の嫌いな部分が見つかりませんね、大好きです。はい。


どうかと思うが、面白い

どうかと思うが、面白い

東京都北区赤羽 1 (GAコミックススペシャル)

東京都北区赤羽 1 (GAコミックススペシャル)